上條信志 / 田上杜夫 / 山本秀佑「ルックバッカンド」

異なるバッググラウンドを持った三人の作り手が集まった時に、自然と行われたのはお互いの過去について語り合うことだった。
ここでは過去を振り返るということが、個人的な感傷としての意味を成す訳ではない。
私たちが意図するのは過去を傍観することではなく、過去を振り返ることで、未来を見据えるための現在の視座を並び立たせようというものだ。

だがそれはもしかすると、美術を含めた様々な大きな物語が問い直されている現代において私たちの取り組みは、ある種の明晰さを前提とする美術そのものへの、中傷にも近い行いとも酌み取られてしまうかもしれない。
それはどのようなものであっても個人にとって過去とは、本来限りなく私的なものであり、非美術的な領域にあるからだろう。

しかし、各々があえて今一度自らの過去を振り返り、議論し考察することが出来るのであるならば、現状のネガティヴな側面を 捉えることが可能だと考える。過去を通して見えてくる接続項を繋ぎ、一つの展覧会として提示することで、現代を生きる私た ちを取り巻いている曖昧なままの現状 / 制度に対し、別の視座をもたらしたい。そうすることこそが、私たちの最も真摯な営み として機能するのではないかと考えている。