EEE

2023.05.13(土)〜 05.28(日)

酩酊するほどではないが、ふらつきながら帰路につく。どこにも合わせる気のない視点に紛れ込んでいた、街灯の橙に照らされてできた影を絵を前にしてぼんやりと思い出す。描きかけの荒れた画面にその影を象ろうと試みるが、擦ったような筆跡と隣の水色との境目が私の注意を引いたからかあの夜の影よりも歪になって現れた。それでもまだあの光景を絵の中に見ることができる。
しばらくして黄と水色の画面を眺めていると途端に虫唾が走り、覆い隠そうと灰色を乱暴に塗りたくった。
荒々しく横方向に広がった灰色を横目に、そびえ立っていた街灯を思い出したかのような素振りで筆を握る。不純な動機で引かれたその線は案の定不快なもので、掻き消すように必死に引き伸ばす。気がつくと街灯を模した線は窓のような四角い姿をしている。薄い膜にも見えるその窓を囲うように黄色を振るうが、勢い余って境界を侵食した黄によってその縁が凸凹になっていた。
不恰好なその縁をもう少し近くで視つめようと、赤茶色の線でなぞってみたがその所為で急に陳腐なものに見えてしまい直ぐ様こそぎとった。
躊躇い傷のように残った線が雨水や風呂場の天井の滴りに少し似ていた。


あをば荘では、2023年5月13日(土)より畑林和貴の個展「EEE」を開催いたします。初日は来場者も参加可能なディスカッションも予定。

EEE
展示作家:畑林和貴
会期:2023年5月13日(土) – 2023年5月28日(日) (土日のみ開場)  
開場時間:13:00 – 19:00
5月26日(金)も13:00 – 19:00オープン!
※ 展覧会初日に作家、企画者、鑑賞者による本展覧会についてのディスカッションを行います。2023年5月13日(土)18:00 – 19:00に会場内で予定。

会場:あをば荘
〒131-0044 東京都墨田区文花1-12-12
京成電鉄・都営浅草線・東京メトロ半蔵門線・東武スカイツリーライン押上駅から徒歩14 分
東武スカイツリーライン・東武亀戸線曳舟駅・京成押上線京成曳舟駅から徒歩16 分
東武鉄道亀戸線小村井駅徒歩9 分


【作家経歴】
畑林和貴 KAZUKI HATABAYASHI
1992年岩手県生まれ。東京藝術大学大学院美術教育研究室修了。現在千葉を拠点に活動。これまでの展示に「やわらかな殻」(近藤ビル 新潟2021)「スライダー」(RANZAN STADIO 埼玉2021)ほか。
小川真生樹による、畑林和貴作品についてのテキスト

「したたり」 2023,oil on canvas,(H)530×(W)455mm