じゅうよんなはなし〈14と銭湯〉
2026年、あをば荘は14年目を迎えました。14といえば千々和佑樹さん。2024年に開催した展覧会「生き延びるためのラプソディ」出品作家でもある彼は、「14」をキーワードに製作をしているユニークなアーティストです。
本連載「じゅうよんなはなし」は、こちらが提案したお題に対して、千々和さんに14と結びつけて語っていただく特別企画。14から見えてくる世界を楽しみます。記念すべき初回のお題は「銭湯」です。

14と銭湯
銭湯について、まず今更ながら気がついたことがあります。ひらがなで14番目の文字が「せ」なんです。あ、い、う、え、お、か、き、く、け、こ、さ、し、す、せ……と指を折っていくと、銭湯の頭文字である「せ」に突き当たります。14と銭湯という、これまであまり結びついていなかった二つの事柄が自分の中で重なったのは、少し嬉しい発見でした。
そもそも、私はこの14という数字を、本質的には意味のない記号として扱っています。一方で、物事を考える際、私はまず自分自身の内面で思案して腑に落ちることも多いため、既成の知識と自分の思考を無理に結びつけることに難しさを感じてきました。数字もまた、その成り立ち以上に、比較の中でしか存在し得ない記号に過ぎないのかもしれません。しかし、製作という営みにおいて、単に「14」という数字を心に留めているだけでは発展性に欠けます。だからこそ、私はそこに恣意的な意味を付与し、関連する事象を採取しようとするのでしょう。
そうした視点で眺めると、銭湯もある意味で「14」という数字を感じやすい場所であることに気づきます。下駄箱や脱衣所のロッカーなど、そこは言わば「数字を選びに行く場所」でもあるからです。しかし、目の前に14番という数字が提示されていても、私はそれを無邪気に選べるわけではありません。そこにはある種のグラデーションが存在します。
例えば下駄箱の14番が空いていれば、私はすぐにそこに靴を入れるでしょう。滞在時間が短い靴箱では、入り口に近い場所から埋まっていくという自然な流れがあり、恣意的な選択も目立たないからです。しかし、脱衣所のロッカーとなると話は別です。たとえ14番が空いていたとしても隣に先客がいれば、私はそこで一瞥して少し考えます。「14が好きだから」という理由で他人の隣にわざわざ陣取るのは、端から見れば不自然でしかありません。ましてやそこで「私は製作でも14という数字を……」などと説明を始めるのは、さらに滑稽なことでしょう。
また関連して駐車場、すなわちコインパーキングにおける14番も同様です。隣に車があった場合に、わざわざ14番に停めるのは、乗り降りのしやすさという周りへの配慮を捨ててまで選ぶべきことなのか。脱衣所のロッカーであれば、隣の先客が居なくなるまで待つこともあります。それと同じようにコインパーキングにおいても14番に入れたい一心で、別の場所に停めて隣も空くまで待ってから入れ直すのか…。そんなことまで考えたのは初めてですが、製作の過程で直面する取捨選択に似た、奇妙な葛藤を覚えます。
さらに銭湯には、紙パックや瓶入り飲料の自販機という伏兵がいます。商品が並んでいるレーンには番号が振られていますが、ここでの14はさらに不確実です。たとえ14とボタンを押しても、機械の構造上、同じ商品であれば他の列から落ちてくることがあるからです。私にとっては致命的な「不一致」ですが、そこに抗うすべはありません。
しかしながら、そもそも不吉な数字として「14」そのものが欠番となり、13の次がいきなり15になっていることも少なくないのです。ゆえに、ただそこに番号が存在しているというだけで、私は何処か安心感を感じている気さえしています。私の製作においての「14」という記号は、こうした銭湯での些細な、しかし執拗な数字の採取の延長線上にあるのかもしれません。銭湯という日常の空間でも、私は製作と同じように、恣意的な14の断片を拾い集めていたようです。
千々和佑樹(ちぢわ・ゆうき)
1991 年大阪府豊中市生まれ。2012 年東京造形大学インダストリアルデザイン専攻入学後、2014 年絵画専攻へ転科、2017 年卒業。14 という数字/記号をきっかけとして絵画を作り、物体と組み合わせることで絵画を空間的に展開している。また近年は定まっている14 だけでなく流れている14 にも着目し、これから/いま/かつてを含むすべての時間の流れの14 才へ向けての製作を思案し続けている。
主な展覧会に「群馬青年ビエンナーレ 2021」(群馬県立近代美術館、2021 年)、「黄金町バザール 2021」(site-A、2021 年)、「意図とイデアとときどき健康に」(しあわせ美じゅつ店、2025 年)など。あをば荘では、2024 年にグループ展「生き延びるためのラプソディ」(前期展)に出品。
執筆: 千々和佑樹
編集と写真: 佐藤史治(あをば荘)
編集アシスタント: Gemini
