じゅうよんなはなし〈14と水道〉
2026年、あをば荘は14年目を迎えました。14といえば千々和佑樹さん。2024年に開催した展覧会「生き延びるためのラプソディ」出品作家でもある彼は、「14」をキーワードに製作をしているユニークなアーティストです。
本連載「じゅうよんなはなし」は、こちらが提案したお題に対して、千々和さんに14と結びつけて語っていただく特別企画。毎月14日と28日に更新です。14から見えてくる世界をお楽しみください。第三回は「水道」です。

14と水道
14と水道……。それについて深く考えたこともなければ、ましてや14という数字と関連させて……なんてことは、今までおおよそなかったわけですが。ただ、……ふと「あ、これって14みがあるな」と思う瞬間があります。それは冬、特に豪雪地帯なんかに行った時、トイレや台所の蛇口から水がチョロチョロと出しっぱなしになっている光景に出会うことがあります。凍結防止、水道管が凍って破裂しないように、あえて少しだけ蛇口を捻って、流れを作り続けておく。
なぜこれが「14み」なのか。東洋思想では十五夜の「15」を完全なもの、神格化された数字として扱います。それに対して、一つ足りない「14」は不完全な数字とされる思想があります。15という完璧さは、どこかおこがましい。だからあえて14にとどめておく。それは、ある種の「わびさび」のようなものへの亜種的な感じで、私は14みを感じています。
冬場の、あの細く流れ続ける水。技術的には、もうそんなことをしなくても凍結しない仕組みはいくらでもあるはずです。最近の車が、ワイパーを立てておかなくてもよくなったとも言われていることと同じように。車のワイパーを立てるのだって、雪かきをしやすくするためや、固着を防ぐための切実な知恵です。
でも今は、エンジンの熱で内側から温めれば事足りるのかもしれない。それでも、雪国でワイパーがピンと立っているのを見ると、情緒というか、様式美的なものを視覚的に受け取ってしまう。水道も同じです。効率や最適解ではないかもしれないけれど、「あえて少しだけ流しておく」という行為には、生活の知恵を超えた何かが宿っている気がするんです。何とかベターというか、シンプル・イズ・ベターのような、そういうもの。蛇口を閉め切らず、あえて隙間を作っておく。その「ゆとり」や「未完成さ」に、私は14を感じてしまう。
もちろん、水道代はかかるし、それが必要ない場合では資源の無駄だと言われればそれまでです。……水という資源がどう循環しているのか、下水に行った水がどう戻ってくるのか、そんな想像にも思いをはせながら、そのある種の無駄の中にこそ、誰かに教わったような記憶が混ざり込んでいる。
私にとっての14という数字は、選んでいるようでいて、その実体は消去法的なものでしかありません。14を選べる状況なら14を選ぶし、選べないのであれば、14ではないものの中に「14」を見出して、それで良しとする。14が選べないなら、倍数の28を選べばいい。それすら叶わないなら、かつて誰かが教えてくれた「冬には水を少し出しておくんだよ」という、今は無意味になりつつあるような習慣の中に、14を幻視する。
製作においても、それは常にその繰り返しです。完璧な15に畏怖しながら、14の流れも止めないこと。凍結させないように水を流し続けておくこと。効率化された現代で、水道を出しっぱなしにするような「隙」を持つこと。それこそが、私が考える14性の正体なのかもしれません。という感じで、冬の夜、蛇口から流れる水の音を聞きながら……というわけではありませんが、14と水道。そんな話でした。
(※この話を考えたあと、冬の“水道”や“ワイパー”について調べてみると、現代でもこの「生活の知恵」は普通に行われているそうです。失礼いたしました。)
千々和佑樹(ちぢわ・ゆうき)
1991 年大阪府豊中市生まれ。2012 年東京造形大学インダストリアルデザイン専攻入学後、2014 年絵画専攻へ転科、2017 年卒業。14 という数字/記号をきっかけとして絵画を作り、物体と組み合わせることで絵画を空間的に展開している。また近年は定まっている14 だけでなく流れている14 にも着目し、これから/いま/かつてを含むすべての時間の流れの14 才へ向けての製作を思案し続けている。
主な展覧会に「群馬青年ビエンナーレ 2021」(群馬県立近代美術館、2021 年)、「黄金町バザール 2021」(site-A、2021 年)、「意図とイデアとときどき健康に」(しあわせ美じゅつ店、2025 年)など。あをば荘では、2024 年にグループ展「生き延びるためのラプソディ」(前期展)に出品。
執筆: 千々和佑樹
編集と写真: 佐藤史治(あをば荘)
編集アシスタント: Gemini
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