じゅうよんなはなし〈14と音楽〉
2026年、あをば荘は14年目を迎えました。14といえば千々和佑樹さん。2024年に開催した展覧会「生き延びるためのラプソディ」出品作家でもある彼は、「14」をキーワードに製作をしているユニークなアーティストです。
本連載「じゅうよんなはなし」は、こちらが提案したお題に対して、千々和さんに14と結びつけて語っていただく特別企画。毎月14日と28日に更新です。14から見えてくる世界をお楽しみください。第五回は「音楽」。今回も書き下ろしです。

14と音楽
私の「14」的態度は、音楽でいうと「フューチャーファンク」に通じているような気がします。そんなことを、おぼろげに感じます。
フューチャーファンクの特徴として、アニメの一場面が繰り返しループされたものがミュージックビデオとして使用されています。しかし、音楽の内容と直接的に関係しているようなものは少ないように感じます。また、音楽と映像が合わさることが前提となって成立しているようにも思います。シティポップ的な抒情性を、テクノ的な反復によって展開していく「フューチャーファンク」。それをデジタルな手法でありながら、とても肉体的で懐かしさを感じることから、私は勝手に「ヴァナキュラーテクノ」と言い換えて考えたりもします。
私が特に惹かれるのは、フューチャーファンクの容赦のなさです。過去のものを、そのまま素材として扱う。その機械的な態度に、私はエフェメラルな美しさを感じます。私が扱う絵画というメディウムは、当然のように現実に由来しています。支持体や基底材、絵具、身体、時間。それらと地続きに向き合い続けます。だからこそ、その反動として、現実を反復のなかへ溶かしてしまうようなフューチャーファンクの態度に惹かれるのかもしれません。
私は「14」という既にある数字/記号をそのまま提示し、その都度飛躍した意味との接続を示唆してきました。「フューチャーファンク」もまた、既存の映像や音楽を「代替可能なものに接続し直し続ける」といった連鎖のなかで、別の文脈へ置き直しているのでしょうか。
そんなことを考えているうちに、私にとっての「14」は、思考を促進するためのものではなく、むしろ思考を止めるためのものなのではないかと思うようになりました。
この連載を始めた当初、私は「14」を明らかにしたいと考えていました。どこか吐露にも近い意図があったのだと思います。しかし実際には、やはり私は「14」を説明しようとしているのではなく、ただ提示しようとしている。そのことが、この連載を続けるなかで、あらためて自分にも見えてきました。
私の製作は、「14」という数字/記号から始まっています。しかし、それは十四夜だからでも、十四歳だからでもありません。それらはすべて、あとから接続されたものです。十五を完全とする東洋思想から、不完全な十四として読むこともできるでしょう。あるいは、アルファベットの14番目である「N」を通して、社会的な問題へ接続することもできます。けれども、それらは私の製作を支える根拠ではありません。翻って、やはり私には「コンセプト」はないのかもしれません。あるとすれば、それは「プロンプト」から派生した関係性だけでしょう。
私は「14」を作品のテーマとして扱っているのではありません。また、意味を生み出そうとして「14」を使っているわけでもありません。むしろ、意味を考え始めてしまう私自身を一度停止させるために「14」で留まっています。「14」は製作を開始するための操作であり、反復するための条件と言えるのかもしれません。
フューチャーファンクでは、同じ映像が何度も繰り返されます。しかし、その映像の反復は決して同じ経験とは思えません。それはちょうど「14」もまた、反復されるたびに意味が固定されるのではなく、関係が接続し直され続けることとどこか似ているように感じます。
手を動かすために、思考を止めるもの。「14」という数字/記号は、私にとってそのためのトリガーだった。ただ、それだけなのかもしれません。
千々和佑樹(ちぢわ・ゆうき)
1991 年大阪府豊中市生まれ。2012 年東京造形大学インダストリアルデザイン専攻入学後、2014 年絵画専攻へ転科、2017 年卒業。14 という数字/記号をきっかけとして絵画を作り、物体と組み合わせることで絵画を空間的に展開している。また近年は定まっている14 だけでなく流れている14 にも着目し、これから/いま/かつてを含むすべての時間の流れの14 才へ向けての製作を思案し続けている。
主な展覧会に「群馬青年ビエンナーレ 2021」(群馬県立近代美術館、2021 年)、「黄金町バザール 2021」(site-A、2021 年)、「意図とイデアとときどき健康に」(しあわせ美じゅつ店、2025 年)など。あをば荘では、2024 年にグループ展「生き延びるためのラプソディ」(前期展)に出品。
執筆: 千々和佑樹
編集と写真: 佐藤史治(あをば荘)
編集アシスタント: Gemini
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