完璧に抗う⽅法 – the case against perfection –

2022.07.02(土)〜 07.18(月)

佐藤史治と原口寛子/関真奈美「2人だけでも複雑/はじけて飛び散り、必然的にそこにおかれる」

「完璧に抗う⽅法 – the case against perfection -」は、図師雅⼈・藤林悠による企画展覧会です。企画者を含む9名と1組のアーティストが、2⼈展を隔⽉で開催していきます。第4回⽬は、佐藤史治と原口寛子、関真奈美「2人だけでも複雑/はじけて飛び散り、必然的にそこにおかれる」

この展覧会は、アーティストの図師雅⼈と藤林悠で⽴ち上げました。2⼈展形式の美術展覧会の開催にあたり、事前にリサーチとして出展作家の制作を始めた動機、過去作のすべてについてなど、作品にまつわるインタビューを⾏い、その内容から抽出しコンセプトを作成しました。アーティストの営みについて彼ら/彼⼥らの⾔葉を通してその経験を集積し、発された表現そのものがまた⾃⾝の元へ還るまでの過程を垣間⾒ようとします。 

※藤林悠は第3会期の終了を持って、企画運営から離れました。詳しくはこちらをご覧ください。>>「完璧に抗う方法」運営体制の変更にともなう重要なお知らせ

佐藤史治と原口寛子/関真奈美「2人だけでも複雑/はじけて飛び散り、必然的にそこにおかれる」

会期:2022年 7/2(土)3(日)9(土)10(日)16(土)17(日)18(月・祝)(土、日、祝のみ開場)
開場時間:13:00 – 19:00  

※追加オープン日 7/15(金) 18:00 – 21:00
会場:あをば荘
住所:〒131-0044 東京都墨⽥区⽂花1-12-12 
URL : http://awobasoh.com 
問い合わせ:enhancement.exhibitors@gmail.com 

アクセス:京成電鉄・都営浅草線・東京メトロ半蔵⾨線・東武スカイツリーライン 押上駅から徒歩14分
東武鉄道⻲⼾線 ⼩村井駅から徒歩9分
東武スカイツリーライン・東武亀戸線 曳舟駅、京成電鉄押上線 京成曳舟駅から徒歩20分

あをば荘の感染症対策についてはこちらからhttp://awobasoh.com/archives/1819
※感染対策のため、会場内に滞在できるのは5名までとします。混雑時は、長時間の滞在はお避けください。スタッフがお声がけする場合があります。

イベント情報:アーティストトークの公開 
各会期の期間中に、参加作家と企画者のトークを収録、ウェブ上で公開。本展のテーマや展⽰に⾄るまでの経緯、そして各々が展⽰にどう向き合ったのか話し合います。 

【更新】7/9(土)に収録したアーティストトークを、以下からご覧いただけます。登壇:図師雅人、佐藤史治と原口寛子、関真奈美


佐藤史治と原口寛子(同名2人によるアーティストデュオ、以下佐藤原口と表記)と関真奈美の共通点を挙げるなら、大きく「協働」「異なる、もしくは拡張して表現される、時空間の存在の想起」が挙げられるように感じられる。「協働」自体は、その意味に準ずることを両者ともやっている。佐藤原口はその協働自体が、制作の主目的の1つになっているといえる。関の場合は個人の活動もあるが、他作家とのコラボレーションワークが経歴の中で重要さの比重を占めている。

「異なる、もしくは拡張して表現される、時空間の存在の想起」については、佐藤原口の場合、場所に宿る文脈を浮かび上がらせるような映像をインスタレーションで展開し、その空間の時の流れを複雑に感じさせる仕事が多い。また関は個人の活動も他者との共作も、物や場所に宿る言語とイメージのあり方を解体し、それらを組み換えることで私たちが属している時空間をより多元かつ拡張的に感じさせてくれる。

「2人だけでも複雑」なのだと佐藤原口は語る。人が誰かと関係性を結ぶには、様々な障害がある。それを経てグループやコミュニティを作るということは、ただ単に交流を深める意味があるだけではない。固有の価値観を持つものたちが新しく、そして異なるコミュニケーションを現行の社会で萌芽させることでもある。そしてここで、京都で起きた交通事故現場の風景と自身の制作を重ね、「はじけて飛び散り、必然的にそこにおかれる」と語った関の考えを挿入したい。出会いを衝突だと形容するなら、人やイメージ、言葉、物などが、それぞれなんらかの形で出会う時、生み出されるあらゆる出来事はそのインパクトによって方々に四散する。それは情報としてならば時空間を超え、そして何処かに配置される。その星座のような配置は関が語るように、諸条件の元で「必然的に」なされる。

いつでもあらゆるものたちの出会いは、その関係性の構築に複雑さを必要としながらなお、現行の社会に変わるコミュニケーションの可能性を帯びて、時空を超え、その貴重な情報を散種する。大袈裟だが、そこには希望がある。私たちの生活の中に溢れる出会いは、何も目に見えている今だけの話ではなく、いつかどこかのだれかへ委ねられるものも必然的に含まれている。今回の展示において、佐藤原口と関(今回は1人での参加)の作品に触れることで、私たちがいつかどこかへの出会い、その一端に触れられることを喜んで期待したいと思う。


佐藤史治と原口寛子 SATO Fumiharu & HARAGUCHI Hiroko 

2011年に結成した2人組のアーティスト・ユニット。人間関係の一番小さい網の目である2人というユニットを起点に、結び合わせたり隔てたりする「あいだ」に関心を持ちながら、主に映像を用いた作品やプロジェクトを共同制作している。最近の展覧会に「東京ビエンナーレ2020/2021」(2021年 千代田区立日比谷図書文化館・東京)、個展「ツーツー」(2020年 金沢アートグミ・石川)、個展「talks」(2019年 現代美術製作所・京都)、「いちはらアート×ミックス2017」(2017年 旧里見小学校[IAAES]・千葉)など。2021年晩秋よりユニット名を一字変更。

「ツーツー」インスタレーション風景 2020年 写真:松尾宇人

関真奈美 SEKI Manami 1990年東京都生まれ。言語とイメージ、物理空間と多次元に代理表象された空間を往来する手続きをふむ。近作ではプログラムやシステムを人間の言語レベルで応用したパフォーマンス作品などを制作、発表。主な展覧会・イベントに「船は岸に辿り着けるのか」(2021年 TALION GALLERY・東京)、個展「敷地|Site」(2019年 武蔵野美術大学gFAL・東京)、「記録係 vol.羽島市勤労青少年ホームを記憶し記録する1日」(羽島市勤労青少年ホーム・岐阜)、「PJB」(2017年 BankART1929・神奈川)、「乗り物 #鑑賞」(引込線・埼玉)、「(real) time と study tables」(space dike・東京)などがある。

《六枚の視覚》2019年 撮影:中川周


【展覧会レビュー】

二人と一人は加算でなく、超反映( 中島水緒による展覧会レビュー) 

※本レビューでは、佐藤原口と関の展示にみられた「コピー」「模倣」「影」といった要素から触発された、執筆者・中島の実験的・遊戯的試みもなされている。   

【展覧会アーカイヴ】 撮影:間庭裕基

佐藤史治と原口寛子/関真奈美「2人だけでも複雑/はじけて飛び散り、必然的にそこにおかれる」_ caption

左から 関真奈美
projected escargot
2022 ラムダプリント、半光沢紙
projected unicorn
2022 ラムダプリント、半光沢紙
projected tako who has ten legs
2022 インクジェットプリント、光沢紙
projected kitsune
2022 ラムダプリント、半光沢紙
example of both back of hands
2022 インクジェットプリント、光沢紙
台上の作品、奥から
関真奈美
pattern (kitsune)
2022 インクジェットプリント、半光沢紙
pattern (tako who has ten legs)
2022 インクジェットプリント、半光沢紙
pattern (unicorn)
2022 インクジェットプリント、半光沢紙
pattern (escargot)
2022 インクジェットプリント、半光沢紙
関真奈美
shadowing
2011 映像 6 min 32
佐藤史治と原口寛子 
SH #1
2022 鉛筆、紙
佐藤史治と原口寛子 
SH #2
2022 水粘土
佐藤史治と原口寛子
手のシリーズ(2022)
2011-2019 5 チャンネルビデオ、ループ再生
佐藤史治と原口寛子
私家版 日比谷公園の歴史
2021 書籍用紙、上質紙にオフセットプリント
佐藤史治
Aquarius
2022 インクジェットプリント、半光沢紙
佐藤史治と関真奈美と原口寛子 
複雑、飛び散り
2022 カッティングシート

完璧に抗う方法 – the case against perfection – 出展作家

藤林 悠 FUJIBAYASHI Haruka
小野冬黄 ONO Fuyuki
戸田祥子 TODA Shoko
三枝 愛 MIEDA Ai
平野泰子 HIRANO Yasuko
衣真一郎 KOROMO Shinichiro
佐藤史治と原口寛子 SATO Fumiharu & HARAGUCHI Hiroko
関真奈美 SEKI Manami
図師雅人 ZUSHI Masahito
田中 永峰 良佑 TANAKA N. Ryosuke

本展に向けて
本展は2017年、アーティストの図師雅人と藤林悠による行われた展示「Enhancement」(※1)に端を発する。「身体」という共有のテーマの認識、そして当時私たちにでさえ、ありふれて聞こえるようになってきていたSingularity(シンギュラリティ、技術的特異点)という、漠然としながらも変化を訴えかけてくる時世への、各々の立ち位置を考えることが展示「Enhancement」の目的だった。
その後も図師と藤林による議論は継続して行われ、2人の関心はSingularityやEnhancementといった力ある言葉には決して括ることができない、アーティストの「営み」(※2)自体へと目を向けていくことになる。生きていく環境の中で、無数の事物の流動にさらされながら、作品を制作し、それを社会に開くアーティストたち。社会に影響を与えつつ、と同時に自らがつくり上げた作品とそれによって生じた社会からの影響を受けて、アーティストもまた変容する。そこには、終わりがみえず、しかし、だからからこそしなやかで毅然とした、社会・環境変化へのアーティストの態度が今も、そして連綿と続く歴史の中にもみてとれる(そして、この態度は他の者たちへ連鎖できる)。
本展「完璧に抗う方法」(※3)は、この「営み」の力学や、それを生みだすアーティストたちが生きる環境を知るために現代を生きる9名と1組の参加アーティストたち(※4)へ、幼少期から現在の活動(収録時)までに至るインタビュー(※5)を長い時間をかけて行っている。展覧会はそのインタビューから紡ぎ出されたアーティストたちの関係性を編成した5つの会期によって構成される。
各会期のテーマは個別性を持つが、ぞれぞれの会期と関係を結ぶことで、現代の私たちが思慮すべき事柄を多重複層的に含んでいるものになるだろう。願わくば、本展のアーティストたちの「営み」が交わり、生み出される複数の環境から湧き出た事物が、また、いつかどこか誰かの、できればあなたの「営み」へと流れ出すことを期待する。

※1 Enhanement … 「増強」「増進的介入」と訳される先端科学医療技術の用語でもある。「治す」のではなく、遺伝子操作、投薬、人体改造など元々の健康状態の身体や精神に影響を「加える」技術。人間観の変質や優生学的差別にも結びつきかねない観点から、議論が重ねられている。展示「Enhancement」はこのトピックから示唆を受け、図師と藤林というアーティストの心身状態とメディウム、そして制作や制作環境との関わりを考え直すものだった。会場はSpace Wunderkammer(2017年3月24日~4月9日、金土日のみ)。期間中、冨安由真、田中永峰 良佑、奥村直樹、菊池良太、佐藤史治と原口寛子を招いてのトークも行った。

※2  「営み」というテーマにおいては、本展の会場となる「あをば荘」も非常に重要な意味を帯びる。2012年より墨田区の古い集合住宅の一部を改装し、企画スペースとして運営しているオルタナティブスペースだが、2階を企画者たち自身の住居にしていたこともあったりと、生活と表現が分かち難く結びつく場でもある。これまで運営に関わってきた者も、アーティスト、美術・演劇関係者、農業関係者、福祉従事者など多様である。

※3 本展のタイトルは書籍「完全な人間を目指さなくても良い理由 遺伝子操作とエンハンスメントの倫理」(マイケル・J・サンデル著、林芳紀・伊吹友秀訳、2010年、ナカニシヤ出版)の原題“THE CASE AGAINST PERFECTION”を、企画者たちが意訳したものである。本著は、企画当初の図師・藤林によるリサーチや対話、振り返りの中でたびたび取り上げられてきたものでもある。

※4 本展によって私たちが意図するものは、本来すべてのアーティストが対象であることは自明である。そのため今回参加をお願いしたアーティストたちは、テーマに照らし合わせた上で、図師・藤林が自分の眼で作品をみて、言葉を交わした、それぞれの具体的な経験に基づく作家が挙げられている。結果的に同世代の作家が集まっている。

※5 本展のために実施されたアーティストたちへのインタビューは、展覧会後にまとめられる記録集にて一部掲載される予定である。

↓ 詳細についてはこちらから ↓

【第1回】藤林 悠/小野冬黄 「粧いを変える/何かに決めないでおく」

【第2回】戸田祥子/三枝愛 「波を掴み、地と歩む手立て」

第3回】平野泰子/衣真一郎 「風景(私は知っている/整理できない」

【第五回】図師雅人/田中 永峰 良佑「“うた”へ対う(責任あるいは、わりきれなさから)」